GLASHAUS(グラスハウス)

伊藤ゴロー

2012.04.25

『これぞ浪漫的かつ抒情的な、真の無国籍音楽です。』 坂本龍一

<インタビュー>
intoxicate
OTOTOY

<レビュー>
HMV

1. Glashaus
2. Five Steps
3. November
4. Tone Revenge
5. Obsession
6. Wings
7. Beaches
8. A Stamp
9. Glashaus -with strings*
10. Wings -with piano

All Composed,Arranged & Produced
by 伊藤ゴロー

Guitar : Goro Ito
Cello, *Strings Arrange : Jaques Morelenbaum
Piano : André Mehmari
Piano : Marcos Nimrichter
Bass : Jorge Helder
Violin : Bernardo Besseler

— Recorded (Tokyo)
20 oct, 29 dec 2011, 6 feb 2012 at Pastoral Sound, Recording, Mixing Engineer: Taiji Okuda (studio MSR), Piano Technician: Michiko Mikata
— Recorded (Rio de Janeiro)
4 jan 2012 at Biscoito Fino
8-10 jan 2012 at Rockit! Studios, Recording Engineer: Duda Mello (Rockit! Studios), Assistant Engineer: Lucas Ariel (Biscoito Fino)
Mastered by John Davis (Metropolis Mastering Studios)

青野賢一(BEAMS クリエイティブディレクター、BEAMS RECORDS ディレクター)
極めて稀ではあるが、時が止まってしまったような、晴れた日の午後と出会うことがある。まるで自分が世界と隔絶しているような感覚は、言葉にすると寂し気なように思われるかもしれないが、孤独とはまた少し違って、思いのほか甘美なものだ。この感覚が『GLASHAUS』を聴く時、呼び起こされる。静けさの中、普段意識などしない空気の動きを感じるように、このアルバムの音楽は、私たちのまわりを、少しずつ変化しながら包んでゆく。ジャケットに置かれた切手は、切手というものの性質上、一見、そこに刻印された時を封じ込めてしまいそうなのだが、この切手は「架空の国の架空の切手」。どこにも出されず、どこにも届かない、いわば宙吊り状態のまま、本作を聴くときの夢見るような時間を象徴しているかのようだ。

André Mehmari
伊藤ゴローのニューアルバム、この素晴らしい作品に参加出来たことを大変喜ばしく思っている。彼の生み出すサウンドには一点の曇りもなく、その創造性は削りたての鉛筆のように鋭い。アルバムタイトル曲である”Glashaus”の持つ普遍的なメッセージに私の心は強く動かされた。ギターとピアノのコンビ ネーションがこの曲に完璧にマッチしていると思う。また別テイクではストリングスを加えることで更なる深みと響きを得ている。ノスタルジックなパヴァーヌ で、詩的な響きを持つ”November”を聴いて私の頭に浮かんで来たのは、伝統的な日本の風景、満開の桜に彩られた京都の古刹を散策するガブリエル・ フォーレの姿である。
重厚で親密さにあふれ、瞑想的で透明感がある。そんなゴローさん新作の成功を心から願っています。近い将来また会えますように。
私が愛してやまない場所である日本に、こんなにも素晴らしい友人がいることを誇りに思っています。ドーモアリガトウ。

岩間洋介(moi “カフェ モイ” )
届けられたのは、どこか遠くの、知らない国の切手が貼られた10枚の音の絵葉書。
目をこらすかわりに耳をそばだててその、音の向こうに広がる心象風景をぼくも逍遥する。ゆらりゆらり。
口にふくめば傍らのコーヒーが、お茶が、そしてお酒が、どこか遠くの、知らない国の味がする。

影山敏彦(tico moon)
ジョンが初めて訪れたヨーコの個展で出会った言葉は”yes”。
ゴローさんの奏でる音楽からは、いつもこの”yes”を感じます。
12年前にゴローさんの音楽に出会ってから、naomi & goro、moose hill、映画のサウンドトラックや数々のプロデュース作品等、数多くのアルバムやライブに触れてきましたが、その全てのパフォーマンスから”yes”を受け取ってきました。
勿論いつでも必ずしも作品の真ん中に在るというわけでは無く、ジャケットの裏側にそっと忍ばされていたり、ライブの余韻に含まれていたり。
でも必ず何処かに存在する”yes”に触れる為に、ずっとゴローさんの音楽を聴き続けてきました。
そして『GLASHAUS』。
彫刻家がそこに存在する筈の作品を、一彫り一彫り丁寧に形にしていく様に、ゴローさんによってこの世に齎された作品。
2012年春、ずっと待ち望んでいた最高の”yes”に出会えました。

川口美保(SWITCH)
楽器が重なり合う空気、音楽家たちの静かな息遣い……。国やジャンルを「越境する」という言葉では足りない。意識や感覚をも研ぎ澄まし、互いを思い合い、それゆえに深くひとつに溶け合う、これこそを共鳴というのだと思う。

工藤健志(青森県立美術館学芸員)
時間も場所も超えて、そこにあるかのような音楽。
しかも、しっかりとした存在として。
新しくはないけど古くもない。
乾いているけど湿ってもいる。
色彩豊かでありながら、なおかつ透明無垢。
そして西と東のしなやかなつながり。
その音楽にじっと耳を傾けていると、まるで無数のユートピアが想起されるかのように意識が拡張していく。
「普遍」という概念がもしこの世にあるとすれば、まさしくこのアルバムがそれにふさわしい、と僕は思う。

小林和人(Roundabout、OUTBOUND 店主)
白昼、盛りを過ぎた桜が寺の境内に花びらを散らす様をぼんやりと眺めつつ聴く。
目の前を舞う花弁の一枚一枚が意味を帯び始めるのに、ふと気付く。
かと思うと次の瞬間、その景色の全てが幻に思える。
消えた音は何処に浸み込んだのだろう?
よろよろと自転車のペダルを漕ぐ。
瞼に焼き付いた旋律。

小沼純一(音楽・文芸批評家、早稲田大学教授)
デュオ、2人のミュージシャンがおなじ時間、おなじ空気を共有する音楽が、アルバムの大半を占めているのは、偶然でない。そして2人から3人へと、ながれのなか、ふ、っと増えて。充実と余裕のなかにしかありえない緊張と、信頼と落ち着きのなかにこそある豊かさ。音が発せられ、つながって音楽になってゆくさまと、音がそっと減衰し、そのまま消え、沈黙へかえってゆくさまとで織りなされる、各曲ごとの、デリケートな質感。あ、これは…、と変化をともないつつかえってくる、《Glashaus》《Wings》、2つの曲。こんな時間をおもいださせてくれたことに、ゴローさん、感謝。

Sean O’Hagan(The High Llamas)
我々は再び伊藤ゴローの完璧とも言える音楽観の饗応にあずかる。
ゴローは今回のインストゥルメンタルアルバム”Glashaus”で、シンプルだが美しい、ギターとピアノとストリングスの組み合わせによるアイディアを提示している。ゴローの驚くべき探求が日本とブラジルとヨーロッパを結びつけ、とても現代的で生命力に満ち、希望に溢れる作品として結実している。
タイトル曲”Glashaus”は2バージョン収録されている。アルバムの幕開けを飾るこの曲は後半でストリングスの装飾をまとい再度演奏されているのだ。1つの曲に対して、いったい何種類の解釈が可能なのか?ゴローはそう問いかけているようだ。
今回ゴローの脇を固めたピアノのアンドレ・メマーリとマルコス・ニムヒター、ベースのジョルジ・エルダー、そしてチェロを演奏しストリングスアレンジを担当したジャキス・モレレンバウムは、録音を進めるにあたり何か特別なものを共有したはずだ。それが”Glashaus”の独特な味わいとして現れている。
私にとって伊藤ゴローの音楽は今日の文化の大部分から失われてしまった知性の表明だと思う。
彼は過去、そして現在において”何が特別なものなのか”を理解しているように思える。
音楽による汎国家的な文化の完璧なブレンドは、進歩的な思考や方針の表れに他ならない。
和声と形式による実験を行う一方で、過去の遺産から優れた表現を参照することで作品は際立ち、我々の耳に生々しく響く。
イギリス人である私が(半分はアイルランドの血が流れているが)日本に滞在して驚かされるのは日本の社会の隅々まで行き渡る音楽の電気的なうなりである。
デパートでも、人が溢れる洒落たバーでも同様の経験をする。
私には伊藤ゴローの音楽が、この不思議なうなりとそれに対する洞察によって生み出されたように思えるのだ。
このすばらしい一瞬一瞬を楽しんで欲しい。あらためて伊藤ゴローに感謝を。

高橋幸宏
ゴローさんはどんなジャンルの音楽をやろうとも、まるで金太郎飴のように常に “ゴローさん” を感じさせてくれるのですが、今作は格別です。まさに真骨頂!! それにしても、音がいいですね~。

中原仁(J-WAVE “SAUDE! SAUDADE…” プロデューサー)
ブラジル・リオ録音という言葉から来るパブリック・イメージを素敵に裏切った音楽。ゴローさんの、いい意味で頑固な男気を頼もしく感じました。静かで繊細で精緻なギターの音が、同時にとても力強く野太く躍動しているのは、リオで録音したからこそだと思います。ジャキスとの会話は兄弟の盃の域。いつもはバックに徹している名手、ジョルジ・エルデルをフロントに引っ張り出したプロデュース・センスにも拍手喝采です。

根岸吉太郎(映画監督、東北芸術工科大学学長)
このアルバムのゴローさんの音はゴローさんがつくりあげたものではなく、ゴローさんがどこかで耳をすまして聴き取った音がならんでいるように思える。だから聴く人ごとにそれぞれの景色が浮かんでくる。たぶんゴローさんは気に入ったところで音を拾い集めて耳の奥にしまっていたのだ。そして今回それらを惜しげもなく私たちに分けてくれたってことだ。

畠山美由紀(歌手)
ゴローさんの静かな情熱が、わたしの叶わなかった願いを慰めてくれるようで朝から晩まで聴きつづけました。
何十回、何百回とまぼろしの時間をこの作品と彷徨わせてもらえてとても幸せです。
ゴローさん、名盤ですね~!!!

原田知世(女優、歌手)
静かに静かに心に染み渡っていく
なんて美しいアルバムだろう

平出隆(詩人、造本家、多摩美術大学教授)
透明ということを求めていくと、いま、音楽ではこうなるのか、と感じさせる。透明を求めることは、あえて多くの光の層を重ねていくような戦いなのだが、戦いであることさえ分られなくなっていくおそれのある、それは、厳しく難しい行為だ。《GLASHAUS》は、音楽でそれをやっているのか、と感じさせる。

Renato Motha & Patricia Lobato
日本であなたのアルバム”GLASHAUS”を手に入れ、帰国以来楽しみに聴かせてもらっています。
とても素晴らしいアルバムで、気品と成熟を感じます。
美しい曲と巧みなギタープレイに加え、参加しているミュージシャンの演奏も素晴らしく、とても気に入りました。
あなたの曲のハーモニーが芳香のように私たちの家を満たしています。
素敵な作品をありがとう、そしておめでとう!

皆川明(ファッションデザイナー)
気持ちに寄り添ってくれる音楽は僕にとって宝物のようだ。
それが一人旅にも連れていきたくなるようなら
もう出会えた事に感謝したくなる。
ゴローさんの今までとは一味違うこのアルバムは旅先の夕暮れの時に想い出とビールを味わいながらいつまでも音に浸っていたくなる。
そしたら少しだけ友に会いたくなったりもするだろう。
いつかこのアルバムを何年後、何十年後に聴いたとき、今の自分を想い出すのかもしれないと
未来からの記憶を空想してみた。

三品輝起(FALL)
10年以上聴きつづけたせいか、『wolf song』はなじみの部屋となった。
数分歩いた距離に海岸があって、寄せ木の椅子を置いていて……。
先日、海鳥の切手をはったアルバムが届いた。
どうやら同じ街に、もう一軒新しい家を借りられそうで興奮している。うす暗い部屋から、海が見える。
ゴローさん、音楽をありがとうございます。長く暮らすことになりそうです。

宮田茂樹(音楽プロデューサー)
それがリオの海岸の風なのか、はたまた北欧の冷たい風なのか、この伊藤ゴローくんの創った音楽には澄みきった空気が流れています。その空気を胸一杯に吸い込むと、音楽の持つ力を再認識させられるのです。売れようが売れまいが、話題になろうがなるまいが、ましてや豪華なゲストがどうのなどとは関係なく、彼の心は音楽に向かって広く無限に開かれています。僕は大好きなアルバムです。ただその一言だけで充分なのです。